星でひとをつなぐ ~星のソムリエの体験談~
大角 泰史 様
「星のソムリエ」をご存じでしょうか?最近では、ワイン以外にも、日本酒や焼酎、野菜や温泉ソムリエなど、「なんとかソムリエ」という資格が数多くあるようです。
「星のソムリエ(星空案内人)」は、山形天文台が中心となって始まった認定制度ですが、現在、全国38か所で認定講座が開かれ、今年6月の時点で931名の星のソムリエが活動しています。
さて、「7月20日」何の日かご存じですか?50年前の7月20日、アポロ11号が月面着陸を果たした日です。私は当時中学3年生だったのですが、深夜、月面からの中継映像をテレビにかじりついて見たことを覚えています。
天体望遠鏡と出会ったのもこの頃です。祖父に買って貰った天体望遠鏡で初めて覗いたのが、偶然、環のある星、土星でした。この時の感動が未だに私を宇宙に引き付けています。
退職後に何をするか?のポイントは、今まで何に一番時間を使ったか?でした。そして星のソムリエとして天文や宇宙の楽しさを伝えることにしたのです。大阪で一番、星に近そうな場所として空中庭園を思いつき、そこに企画を持ち込み観望会を始めてから9年になります。当時勤めていた大阪府立大学の天文部員の協力を得て、今では月一度の定例会を開催しています。私が40階の部屋で今夜見える星空をご案内し、屋上では私の友人や府大の学生達が望遠鏡を出して、皆様に星をお見せする。そんな会がもう50回も続きました。
来場者は、昨今、アジア系の外国人が主流です。「星、見ていきません?」カップルに声を掛けると反応するのは女性、そして実際に望遠鏡を覗いてもっと驚くのは男性。「スッゲー!これ本物?」今の時代、望遠鏡の接眼レンズにスマホを当てて簡単に月が撮れます。子どもさんにやってあげると、自分のスマホに入った画像を見て大満足。そのまま走り去りそうになるのを捕まえて、「おいおい、君の眼で見ないと!」時代を反映した反応です。都会の片隅で、下界に摩天楼の輝きが、そして頭上には満天の・・・とはいきませんが、それぞれの人の思いに合った星空が輝きます。
大阪人のコミュニケーション能力は天下一品です。「おい、これどないなっとんや!」と怒鳴られても、「どないなってるでっしゃろ?」と、いつの間にか相手と同じ方向を向いて話を切り返す。ある人から聞いた話ですが、夫婦でも面と向かって話をすると、敵対?関係になり易いとか。これは冗談ですが、地球上の人と人とが、同じ方向を向いて話ができる唯一の対象、それは「星」です。最近では街中を歩く人は殆ど俯き加減です。それに対して、「星」を見上げる姿勢は、背筋を伸ばし胸を張って遠くを見る。これは眼にも良いとのこと。星のソムリエは、全世界の人が同じ方向を向いて、コミュニケーションを図る仕掛け人と言えるかもしれません。今夜から、是非、ご家族、ご友人とでも星を見上げてください。
ご清聴ありがとうございました。