24時間社会の健康問題と概日リズム

卓話の世界

24時間社会の健康問題と概日リズム

京都府立医科大学
統合生理学部門 教授
八木田 和弘 様

グローバル経済に伴う都市機能の24時間化は、いまや生活の隅々まで行きわたり、現代人のライフスタイルを大きく変容させている。さらに、近年、スマートフォンやタブレット端末の急速な普及により、これまで24時間社会と無縁と思われた小中高校生など子どもたちにまで24時間社会の影響は及んでいる。このような社会的な環境変化は、手放すことのできない利便性を提供するとともに、世代を問わず現代を生きる人々に様々な健康問題も生じさせている。警察消防、さらに医療福祉関連施設に勤務する労働者のみならず、工場労働者やコンビニエンスストアに代表される24時間営業の商業施設の多くは交代制勤務(シフトワーク)を採用しており、夜勤を含むシフトワークに従事する労働者は2012年の統計では全労働者のうち21.8%、約1,200万人に達し、その数はさらに増え続けている。日勤と夜勤とが比較的短期間のうちに入れ替わるシフトワークにおいて体内では常に時差ボケと同様のことが起こっていることが推察できる。さらに、子どもの睡眠不足や生活リズムの乱れは不登校などの原因にもなっている睡眠障害との関連を指摘されている。しかし、現在、このような24時間社会がもたらす様々な健康問題にほとんど有効な対策が打たれていない。それは、なぜだろうか?
確かに、24時間社会は私たちの体内時計を無視した生活を強いることになり、体内時計の乱れが続くことによる健康問題を生じさせる。しかし、シフトワークを社会からなくすことなどできない。「不規則な生活はかだらに悪い!」などと訴えたところで現実を生きている人々や社会には響かないのである。2017年のノーベル生理学医学賞は体内時計がその対象となったが、ノーベル委員会の委員であるクリスター・ホッグは賞の発表と同時に「自分の時計に従わないことによる影響について、さらに学び続けている」(ロイター通信)というコメントを出して、現実社会の課題解決に至っていない研究の現状を指摘している。このような社会的背景を踏まえ、我々は、あくまで、24時間社会の現実を直視した上で、そこに暮らす現代人がより健康に生きるために我々専門家は何ができるのか、という視点が必要だと考えている。この現実を前提とした研究として、我々は健康リスクにつながる病態メカニズムの解明とともに、より良いシフトの組み方などの処方箋の根拠となる科学的エビデンスを積み重ねている。
本講演では、24時間社会の「リアル」と、その諸課題への対策を講ずるための我々の取り組みについて、「わかっていること」と「わかっていないこと」を整理しながら紹介する。

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