卓話 2020年02月06日

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詩吟の世界


日本吟道岳龍会総本部 会長
中山 岳襄 様

 我が国の伝統文化であり、精神文化として一世を風靡した詩吟の愛好者が往時に比して半減した現状を真摯に受け止め今後若者世代に受容される新たな詩吟文化の創造を目指して何を成すべきかの提言をしたく思います。
 日本が高度経済成長期に入った昭和40年代から60年代の詩吟人口は、300万人とも400万人とも言われました。この時期各企業が挙って社員の定着率向上の為、福利厚生策としてクラブ活動の推進を計り、詩吟もその一つとして職域支部が続々と誕生し所謂団塊の世代前後の若い社員が競ってこの道に入りました。その後の少子高齢化、趣味の多様化、教育制度の改変等により若者の詩吟離れが目立ち現在に至っています。
 詩吟の旋律は、ミファラシドの五音短音階で地味な上に題材となる漢詩が難解で取っ付きにくい難点があります。反面複式呼吸の発声で健康増進につながり、漢詩・和歌・俳句・近代詩等を通じて歴史を学び、礼と節を大切にして老若男女を問わず仲間づくりが可能となり息の長い趣味として人間修行と共に人格の陶冶に役立つものです。
 現在の吟界は、日本財団の助成を得て(公財)日本吟剣詩舞振興会を頂点に各種の大会を全国各地で開催し、とりわけ毎年日本武道館を使用して他ジャンルとのコラボ等趣向を凝らしての大会の他、海外公演、テレビ・ラジオ放送を通して剣舞・詩舞を含めた「吟と舞」の普及を図っている所です。この他、カルチャーセンターや高校・大学の部活動等広く流布しています。
 派手さは無いが日本人の根底に流れている琴線に触れる哀愁を帯びた詩吟の旋律は、これからも長く支持される事と信じて、あらゆる世代に訴えかけたく思います。