卓話 2020年01月23日

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ロータリー財団奨学金による留学を終えて


元グローバル奨学生
国立循環器病研究センター

福田 真弓 様

 2013〜14年度ロータリー財団グローバル奨学生として米国Harvard公衆衛生大学院に留学しました。
 医療においてより良い治療法を開発するためには、実験室のデータだけでは不十分で、「臨床研究」が不可欠です。残念なことに、これまで日本では、基礎研究に比べ臨床研究はあまり重要視されず、医師や医学生が、臨床研究を行う上で欠かせない疫学・統計などの専門知識を学ぶ機会は限られていました。一方欧米では、公衆衛生大学院が20世紀の初頭から設立され、現在米国にはおよそ45の公衆衛生大学院があり、約1万人の学生が学んでいます。
 私も臨床研究の専門知識を習得するため、留学を志すようになりましたが、Harvardは学費が非常に高額で、加えて滞在費も大きな経済的負担です。そんな折、ロータリー財団が「未来の夢計画」という新事業を開始すると知り、千里RCのご推薦を頂き、’13年5月に財団奨学生に採用いただきました。
 在籍したのは臨床研究に従事する医師が対象の修士課程で、1年間で疫学・統計などを学びながらテーマを決めて臨床研究を実践しました。慣れない環境でのハードなコースワークに苦労しましたが、現地および第2660地区ロータリアンの皆様の温かいサポートにより、’14年5月に卒業できました。
 留学当時、日本で臨床研究関係の不祥事が問題になりました。解決には疫学・生物統計専門家など研究支援体制の充実が必要です。私は帰国後、国立循環器病研究センターデータサイエンス部にも所属し、臨床研究の立案・企画、研究に参加する患者さんの人権の保護と、研究の品質保持活動、臨床研究者の教育や支援などに携わっています。
 私は財団奨学生として、非常に手厚いご援助をいただきました。公衆衛生大学院への留学に対する奨学金を出す学会、企業はほとんどない中でロータリー財団に助けていただき、心細い留学生活も安心して送ることができました。また、ロータリー重点分野の奨学生という誇りと使命感が留学中のモチベーションの維持につながりました。
 近年日本の留学生減少が指摘されますが、潜在的な希望者、特に専門職系大学院への留学希望者は少なくないと思います。一方自費留学の場合、高額な学費や生活費が高い障壁になっています。財団奨学金は未来の日本、世界を支えるリーダーの育成に重要な意味を持つと、僭越ながら思っております。今後もぜひ多くの留学生にご支援を頂ければと思います。