卓話 2017年11月16日

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児童養護施設の現状と今後の課題


社会福祉法人/児童養護施設
大阪西本願寺常照園
園長

小川 健二郎 様

 今回は自立支援、アフターケアを中心にお話したいと思います。
 「家賃を3か月滞納している」「奨学金を返済していたが、全て親が搾取していた」「姉がお金を搾取して学費が払えない」「仕事が続かない」「生活保護を受けたい」…妊娠中絶の問題。金銭トラブル等、施設を退所した卒園生から苦痛な相談が見えてきました。
 児童福祉法に「退所したものに対する相談その他自立のための援助を行うこと」と明記されています。しかし、実際には、どれだけの施設がそこに注力してきたか。なかなか満足には程遠い状況があります。人員配置の足りなさ。今いる入所児の対応。卒園生が里帰りしてきても、自分が生活していた部屋には他の子が生活しており、職員は忙しくしている。卒園生にとって些細なことでは職員に相談をしにくいという状況があるようです。
 幼少期から関わってきた子どもが退所し大人になって困っている。それに手を差し伸べずに何の仕事をしているのかわからない。そんな思いが職員を動かす。困っている卒園生は数多くいる。性産業に流れる女の子たち。若者ホームレスの10%は児童養護施設出身。何ができるのか。アフターケア検討会を立ち上げ、退所者名簿の整理。支援先の開拓。自立支援弁護士システム、成人式プロジェクト、自立支援プログラム(一人暮らし体験)、仕送りプロジェクト等、形のないものが形になり、制度のないものを生み出してきました。東京都には存在する自立支援コーディネーターという制度を、制度なしで始め、大阪府のモデル事業として今年度補助金がつきました。
 「困っている子どもに寄り添える伴奏者を一人でも多く見つける」私たち施設にできることは限られています。いかに支えてくれる社会資源とつなげられるか。つながることで、支えられる子どもたちが多くいます。ここ数年で実感することができました。「子どもの最善の利益」「社会全体で子どもたちを育てる」という理念のもと、社会的養護の充実をどうかご一緒に目指していただきたいと思います。