卓話 2018年10月25日

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音楽家としての使命


チェリスト
植木 美帆 様

 この度は貴重な機会を頂き誠にありがとうございます。今日は自身の活動について僭越ではございますがお話をさせて頂きたく思います。
 私は大阪音楽大学を卒業後、ドイツ・ミュンヘンに留学しました。ドイツで最も印象的だったのはクラシック音楽が根付いていることです。巨匠クラウス・シュトゥルク氏のもと、ドイツの伝統奏法と音楽の神髄をたっぷり吸収し、2年半の留学生活を終えました。
 帰国後、「クラシック音楽をより身近に感じてほしい」との思いで活動を始めます。しかしなかなかクラシックファンは増えません。
 よく考えると「その良さがきちんと説明できていない」との気づきがありました。例えば絵画展に行った時、『音声ガイド』があるとよりその絵が身近に感じます。全てのお客様に楽しんでいただけるよう工夫しなくては...、と痛感し、演奏会の企画を見直しました。
 例えば、音楽が時代と共に進化を遂げる様子を体感してもらう演奏会、また専門用語を使わない解説、どんな方にでも理解して頂けるような「腹に落ちるコンサート」を心がけました。すると、お客さんの反応が変化します。演奏とお話をテンポよく織り交ぜ、居心地の良い空間を作る...。そして更に興味を持っていただく。その積み重ねがクラシックファンを増やすことに繋がるのではないかと思いました。
 ソクラテスの言葉にこうあります。
 「音楽を学ぶことは最上である。音楽だけが魂の深奥にまで入り込む。(魂を)力強く引き締め、優雅さを授け、正しい魂のあり方へ導いてくれる。あらゆる芸術の中で音楽が最上級のものである。」そしてこう締めくくります。
 「音楽を学んだものこそが国家を成す。」
 「国家」(プラトン著)にあるこの言葉に出会い、更に身が引き締まる思いがしました。この言葉を胸に今後も力強く前に進みたいと思います。

植木美帆様(チェリスト)プロフィール
 大阪音楽大学卒業。同大学助手を経てミュンヘンに留学。イタリアでの音楽祭や、ハンガリーでのコンサート等に出演。
 2012年韓国・光州にて、神戸市との文化交流推進において「神戸ビエンナーレ」を代表し演奏を披露。
 帰国後は東京・兵庫でのリサイタルツアーやディナーショーなど、精力的に演奏活動を展開。「クラシックをより身近に!」と、自らの言葉で語りかけるコンサートは多くの反響を呼んだ。
 教育においては、個々にあった自然なフォームを提案し、チェロ本来の音色を導く独自のメソッドは定評がある。また、従来の音楽教育の弱点に注目し研究を重ねた「4,5歳児のためのプログラム」は15年の実績がある。
 インターネットラジオのレディオ・バルーンにて『植木美帆のミュージックライフ』(月曜21:00〜) のパーソナリティを、また「関西ウーマン」ではコラム「心に響く本」を連載。CDアルバム「アヴェ・マリア」はAmazonや公式ホームページなどで好評発売中。大阪音楽大学付属音楽院講師。大阪日独協会、兵庫・神戸CSの会、神戸音楽家協会、各会員。