卓話 2015年10月01日

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日本文化と西洋文化のはざまで


大阪学院大学 教授
シルヴァン・ギニャール 様

 本日はお招き頂き有難うございます。

 私は23年間日本で生活しておりますが、毎年1回スイスに帰ります。この様に日本とスイスを往復しておりますと、夫々の違いが非常に良く分かります。今年は6週間ほどスイスにおりましたが、両国の違いが非常に理解できました。スイスの電車から降りた時に駅に沢山のたばこの吸い殻が捨ててありました。こんな事は日本ではありません。昔は、スイスは世界で一番綺麗な国であると教育されましたが、今はそんな事はありません。日本の方が綺麗です。

 夏にスイスに帰る理由は日本の夏にあります。日本の夏はとても暑くて7月から8月までは、スイスに避難する訳ですが、今年はスイスも非常に暑くって大変困りました。それは、スイスにはエアコンがないのです。暑さから逃げようがないのです。日本は暑いですが、エアコンが何処にでもあって暑さから逃げる事ができる。これが素晴らしいのです。

 チューリヒの湖のほとりを歩いていて思ったのですが、スイスの湖は本当に美しいです。水が澄み切っていて、5メータ以上の底まで見えます。ところが、私達が12年間住んでいる琵琶湖ですが、遠くから見る琵琶湖は素晴らしいのですが、浜辺を歩くとゴミが散乱していて藻が一杯あり本当に汚いのです。この様にスイスと日本とでは、良いところ、悪いところがあります。

 この様に両国には違いがありますが、30年前に日本に来る時は、その比較をする為に来たのではありません。日本に来た理由は日本の音楽に興味があったからです。大阪大学の留学生として来た時は、未だ日本語を十分話せませんでした。その為、毎日、日本語の翻訳をしていましたが、ある時、指導教官が私に実践的な研究をした方が良いのではないかと薦めてくれたのです。そして、琵琶を薦めてくれたのです。その時はまだ、インドの音楽にするか、中国の音楽にするか考えていたのですが、日本には多種多様の音楽があり、その中でも琵琶は余り研究が進んでいなかった訳です。その為に自分がその琵琶の第一人者になれるのではないかと考え琵琶を始める事になったのです。

 そして、人間国宝の山崎旭萃先生に出会う事になったのですが、当初は4年間先生に師事して、その後、スイスに帰って日本音楽の専門家として過ごそうかと思っていましたが、なかなか自分自身で琵琶というものに納得がいかなくて、研鑽を積んでいるうちに30年になってしまいました。それには人間国宝の山崎先生との素晴らしい人間関係があった事も事実です。そして、今の私が数少ない琵琶奏者として日本で演奏活動が出来る事に感謝しております。